Thief (2014) レビュー

今は無きLooking Glassスタジオが、98年にThief: The Dark Projectを発売した。これは一人称ステルスの始祖で、光と影の概念をゲームプレーに取り入れ、多様な攻略アプローチを可能とし、音響に力を入れ雰囲気づくりにも一役買った。ステルスゲームの舞台は、大抵が現実世界である中、モンスターや機械人形が跋扈するファンタジーというのも珍しかった(当時は他にステルスがなかったが)。今日でも根強いファンを持ち、MODにも困らないシリーズだが、3作目においてゲームプレーの簡素化が行われ、先のファンの非難の的となっていた。

断っておくと、私はむしろステルスは苦手で、敵が過ぎ去るまでじっと待つという行為がじれったい。そのため、3作目の簡素化は歓迎していた。むしろ気にしていたのは、ストーリーを含む世界観である。事前のトレイラーの中に、ドラマチックな演出、電子音楽、ヒロインらしき存在があり、閉口していた。すなわち、主人公ギャレットは卓越した技量を持ちながら、どこの組織にも属しない存在で、世界を揺るがす陰謀を仕方なく解決するアンチヒーロー(大家の家賃取り立てに怯える)であり、ギャレットの関係者の大抵は悲惨な死を遂げ、演出は終始淡々としており、ヒロインや電子音楽なぞ言語道断である、と。

実際にプレーすると、身構えるほど酷くはなかった。ギャレットの声優が変わっている(Stephen RussellからRomano Orzari)が、気になったのは序盤だけだった。ネタバレになるので詳しく書かないが、ヒロインの存在感も薄い。ドラマティックな演出は、各チャプターの後半のみで、この程度は緩急の切り替えとして好ましい。ただ、発見されたときの電子音楽はやはり合わないし、影を主体とした絵画的なカットシーンがなくなったのは大きなマイナス点である。

尚、旧来のシリーズに出てきたハンマーライト教会やパガンのような勢力は出てこない。新たなストーリーということで、新規の人は入りやすいだろうが、以前の話が好きだったプレイヤーはがっかりするだろう。

ゲームプレーは3を踏襲したものになっている。シティをハブとして各チャプター(自分の行動が評価されるので、リプレイ要素となっている)に進むにはあちこちに行かないといけない。当然、道中は衛兵が巡回しているので、これらを回避する必要があり、後半になると物臭に感じた。他、NPCや市井の人の会話によって、サブミッション等が発生し、シティ中を奔走して貴金属を拝借することになる。これで得たお金によって各種道具を購入することができる。また、あるキャラクターに寄付することで、自分のスキルをアップグレードできるので、積極的に貯めていくほうがいいだろう。

メインチャプターの攻略アプローチはいくつかあるものの、自分で作り出していた初代や2と比べると見劣りがある。グラフィックの発達でインタラクトできる場所がわかりづらくなっているが、これはフォーカス機能で青白く浮かび上がる。気になった点として、一部のアクションで不要にボタン押下を強いられる。窓を開けたり木材をどけるために、毎回Eキーを連打するのは面倒くさいことこの上ない。また、シティの地図にマップ切り替え地点を記していないのが不味い。特にサブミッションにおいては、敢えて考えさせるためにわかりずらい位置にしているのだろうが、延々と迷ってしまうことも少なからずあった。

私は鈍臭いので、ステルスに関する配慮に助けられた。すなわち、ステルスがばれそうな時は、アイコンの表示が満たされつつ、且つサウンドエフェクトで知らせてくれる。警戒度も表示されているので、非常にプレーしやすいと評価できる。

AIの巡回は単純な往復運動なので簡単に予測がつく。しかし、一部で複数の敵がいるので、そこはタイミングを推し量る必要がある。また、鳥は素早く動くと暗闇でも反応し、犬は近づいただけでも呻り出す。単に暗所を探せば良いということにもなっていない。発見されると、高所に登れば追撃を諦めるが、ボウガンを撃ってくる敵もいるので気が抜けない。戦闘になると視点が敵にロックする。Vキーで回避し、ブラックジャック等で撃退することになる。

グラフィックはアンリアルエンジンを使用。前作から10年の経過があり、どのような雰囲気になるか気になっていた。従来の作風とは少々違う気がするが、これはこれで気に入っている。深い青をした夜空と、疫病が蔓延した街の雰囲気は良くできている。

サウンドは目立たない要素になってしまった。前作までは、EAXサウンドに対応し、周りの音や反響音などを強化できたが、本作ではできないようだ。ゲームプレイおよび作風にも合致する要素なので、非常に惜しい。上述したように、発見されたときの電子系BGMは雰囲気に合わない。これらは、どちらかというとDeus EXに合っている。一方、普段の環境音的なBGMは好みである。日本語音声も選択できるが、そのクオリティーは確かに高いものの、やはり洋ゲーは日本語字幕がいいかなと思う。ギャレットの人柄が全く違うように感じるためだ。加えて、日本販売元の日本語化パックの有料は呆れる。卑賤なことこの上なしと評する。

総評として、従来のファンをも納得させるようなアレンジではないが、新たなプレイヤーを抱きかかえるための良好なものに仕上がっていると言える。新たなストーリーを起こしたのも、そうした意図だろう。ゲームプレーも、ステルスが苦手な私もできる程度(ノーマルでプレー)にしてある。

カテゴリー: ACT, FPS パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください