You are Emptyレビュー

注意:このレビューは、以前私のサイトで掲載していた過去のレビューを修正加筆したものです。ゲームに対する考え方等は、できるだけ執筆当時のままにします。

2007年に発売された、ウクライナDigital Spray製作のFPSで、販売は1C Companyが担当している。青龍さんの記事でこのゲームの存在を知ったが、日本はおろか欧米でもその認知は低い。現在、ダウンロード販売は行われておらず、リテール版がわずかに残っている程度。

時代は1950年代、架空の歴史。貴方はソ連の役人で、仕事を終えて帰宅していると交通事故に巻き込まれる。搬送された病院で目を覚ましてみると、回りの人間達は狂ったりミュータントと化したりして、お互いに殺しあっていた。貴方はこの原因を突き止めなければならない。

東欧産のFPSといえば猫も杓子もミュータントで、「これもやっぱりそうなのか…」と思ってしまうだろう。ただ、他の同ジャンルの作品よりよくできている。ストーリーは「ソ連政府主導で、新たな人類を創り出す計画が失敗して大惨事」というものだが、その表現方法が素晴らしかった。ムービーは白黒の無声映画である。与えられる情報は抽象的なので、プレイヤー自らが全てを解釈しないといけない。一見、ムービーとゲームは全く関係ないように思われるが、注意して見て欲しい。登場人物は5人ほどしか出てこないが、大抵は直ぐ死んでしまうので、実質は主人公とある人間のみ。プレイヤーが操る主人公は匿名性が高く、むしろ主人公はもう1人のほうだろう。尚、「You are Empty」と奇妙奇天烈な題名だが、エンディングを迎えたときにうっすらとわかるかもしれない。

ムービーには文字どころか、セリフすらない。映像でストーリーを解釈する難しさがある。インゲームで何人かのキャラクターと喋ることがあるが、字幕はない。一方、資料や鍵の場所を記した文書が点在してあり、その英語を読めばクリアーできる。尚、このゲームには「~へ行け。」「~を破壊せよ。」というミッション目標はないので、自力で進路を探したり、障害を除去したりする。

ゲーム性がどうなっているのか、気になる人もいるだろう。私は安っぽい東欧産ということで、「撃ってる感覚がない、移動感覚も変、荒唐無稽なストーリー、ect…」と、先入観を持っていた。しかし、このゲームはその辺のB級ゲームより、頭ひとつ分抜けている。以下、基本的な情報を簡単に記す。ストレートなシューティングで、FPSとしての基礎はよくできていた。ステルスやアドベンチャー要素は一切ない。移動力は遅く、反動やマズルフラッシュで武器は使いにくい。しかも、敵の攻撃力が高いので、割と慎重な行動をとらなければならない。理不尽な敵のスポーンはなく、声で事前に察知できる。また、それほど大量の敵を倒すこともない。銃を撃ってくる敵に対してはヘッドショットが非常に重要で、いらぬヘルスの消耗を防げる。また、突っ込んでくる敵には、できるだけ引きつけてショットガンをお見舞いする戦法が有効である。

アクションかホラーかのどっちつかずのバランスだった。最後まで「異なるマップで同じ敵を延々と倒している」感じで、ゲーム的な盛り上がりはなかった。まあ、テーマが「死の都市でのサバイバル」なので、劇的な起伏はやらせっぽくなってしまう。静的な虚無が台無しになるので、淡々と進むゲームのほうが合っている。

謎解きはほとんどなく、基本は戦闘一辺倒となる。鍵を探したり、スイッチを入れる程度で、頭を使うことはないだろう。開く扉や、壊せる箱などは、周囲の色より少し明るくなっており、容易にわかると思う。

難易度ノーマルでプレーしてみたが、死んだ回数は2、3回程度。遠距離の敵が大量に出てくるシーンが難しい。

8~10時間ほどでクリアー。

敵は19種類だが、中盤までにほとんど出揃うので、後半は飽きてしまった。しかもボスがいないので、余計に冗長に感じた。また全く同じ造形の敵キャラが、何人も同時に出現すると正直萎えてしまう。所持する武器が異なる敵もいるのだが、ごくわずかなので、バリエーションとしては強くない。

AIは単に突っ込んでくるだけのものと、遠距離用の武器を持つ敵と思考ルーチンが異なる。後者は、きちんとサイドステップを踏んで狙いをかく乱し、リロードは物陰に隠れて行う。敏感な反応もしないようで、後ろを向いていればプレイヤーに気付かない。物影に隠れるとこちらを見失うこともある。進路選択は良好で、わざわざ2階から長い道のりを通って降りてきた敵もいる。スタックした敵がいたが(身体のサイズに対し扉が小さい)単調なゲームなので、それほど高いAIを要求しない点に助けられているとも言える。

武器は当時のソ連のものが大半を占める。接近戦ではダブルバレルショットガンとPPSHサブマシンガンが有効。一方、遠距離ではモーゼルピストルとモシンナガントライフル。独自の武器は電気銃というものがあるが、造形も迫力もいまいちで、しかもスプレットダメージを食らうので使いにくい。ライフルの弾薬がレアで、遠距離の敵を撃ちぬく以外はピストルを使用した。また手榴弾がない代わりに火炎瓶がある。これも後半になるとさっぱり出てこなくなった。

アイテムは、弾薬とヘルス(撃ったら壊れる)。他、鍵と資料。なおアイテムを採ると画面にブラー効果が出るが、どういう意図なのだろうか。

マップのクオリティーは、本当に良かった。廃れきったソ連が忠実に再現されている。穀物工場から中枢都市、地下鉄、オペラハウスなど、感心するほどできが良い。ただ、どこもかしこも死んだ雰囲気なので、劇的に色合いが変化することはない。

グラフィックはDS2エンジンを使用している。マップをこと細かく観て回ると、結構荒いとわかってしまうが、プレーする分には申し分ない。先にも述べたが、当時のソ連の再現は素晴らしい(当時のポスターを町中に貼ってある)。モデリングは、ミュータント以外の人間の顔が、デフォルメされて浮いている(特にPeasantとWorker)。敵の攻撃アニメーションも何パターンかあってよかった。ライティングや陰影処理は、明らかに一世代前のもの。何らかの物理エンジンを搭載しており、ショットガンでの吹っ飛び方などはPainkillerのそれに近い。一方、動かせるオブジェクトなどはほとんどない。

サウンドは並。基本的に環境音が主で、特定の場所で短めのBGMが鳴る程度。エフェクト音も迫力のあるものではなかった。ただ、他の東欧製FPSよりは良い。EAX 4.0に対応しているが、効果はあまり感じられなかった。

私の環境で発生したバグを記す。頻繁に死体がマップとクリッピングしていた。特定のマップで、列車の先頭に立っていると、傾いた時にスタックした。(マップの始めなのでロードするだけ)。アイアンサイトに切り替えている最中に発射することができないが、切り替わった後でも撃つことができないことがあった。

総評として、いい意味で裏切られたゲームだ。単調ではあるがFPSゲームとしてしっかりできているし、マップの雰囲気も相当なものだ。一見したところ他のロシア産ゲームと同じようだが、これは全然違う。値段も安く致命的な欠点もない。07年はあまりFPSも出ていないので大穴と言えるだろう。騙されたと思って購入して欲しい。

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